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海外ビジネスの指南役!小田切社長の連載コラム.25

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「海外展開を進めていくうえで、特に現地の人の気質やものの考え方が知りたい」。

そんな声にお応えして、海外ビジネスの経験を豊富に持つ(株)サザンクロスの小田切社長が、世界各国の国民性を解説!

より良い人間関係を構築することは、ビジネスの大きな成果へとつながるはずです。

第25回は、海外の国々における代表的なビジネス習慣や商慣習について、シンガポール編をご紹介します。

小田切武弘氏について

皆様、こんにちは。(株)サザンクロスの小田切武弘です。本誌の2020年9月号から、海外でビジネスを進める際の現地ローカルスタッフへの接し方や、仕事の依頼の仕方、スムーズなコミュニケーションの取り方などにフォーカスしたコラムを連載し、このシリーズでは皆様から特にご要望が多かったタイ国関連のコラムからはじまり、韓国、米国、中国、インド、ロシア、アラブ諸国と連載を続けてまいりました。

前々回からは海外の国々における代表的なビジネス習慣・商習慣について、米国、オーストラリア編を執筆しました。今号では読者の皆様からご要望の多かったシンガポールについて述べて参ります。今後中国、韓国、インド、タイ、UAE、トルコ、ドイツ、ロシアを今のところ予定しています(ご要望の国がありましたら可能な限りお応えいたします)。

はじめに

シンガポール共和国。東京23区とほぼ同じ程度の約720㎢の国土面積に564万人が暮らしています。主に中華系が約74%、マレー系14%、インド系9%。母国語はマレー語で、公用語として英語、中国語、マレー語、タミール語。宗教は仏教、キリスト教、イスラム教、道教、ヒンズー教が主。日系企業数は1,084社(2022年12月時点)。*1 在留邦人数は32,743名(2022年10月時点)。*2 シンガポールは世界でもニュージーランドとトップを争うほど外資系企業が進出をしやすい国として、毎年のようにランクインしています。東京23区より少し大きいくらいという、面積の小さな都市国家に多くの日系企業と在留邦人を抱え、国際ビジネスを展開している国は世界を見渡してもシンガポール以外ないと感じます。


①早い行動と決断

シンガポール人は、打ち合わせや商談を行う際にとにかく行動が早いです。確認が必要な場合にはすぐにその場で相手先に電話やLINEを入れます。また、決まったことについてもすぐに1つずつ必要なアクションを取り始めます。日本企業のように一旦会社に持ち帰って関係者と相談をしたり、上司に確認を取ってから返答したりすることは好まれません。シンガポールも御多分にもれず高学歴社会かつ競争社会で、評価されるためには正しい判断を即時に行う必要があります。また行えるだけの権限も与えられている場合が多いのです。そのため、決裁権のない担当者との打ち合わせや商談を行いがちな日本人ビジネスパーソンは、(日本の商習慣なので、良い悪いは別として)決断と行動が遅いと思われがちな面があります。

②早口で聞き取りにくい英語

シンガポールのビジネスパーソンのほぼすべての方に当てはまるのが、早口で、それも聞き取りにくい英語を話すことです。穏やかであるもののまくしたてられてしまうため、イエスなのかノーなのか、どのような内容を話しているのか、注意しながら相手の話す内容を理解しなくてはなりません。重要な商談や契約書作成等の場合にはわからない部分をそのまま流したりせず、自分自身が完全に理解するまで確認を取りながら進めることを強くおすすめします。

③プライドの高さ

シンガポールのビジネスパーソンは高学歴で、基本的に高い教養と知識レベルを備えています。したがって、たとえ若年層であっても外資系、日系の大手企業や金融関係などで働いている社員はおおむね気位が高く、あくまで自分の意見を通そうとすることがあります。また、自身の手落ちや間違いがあったとしても基本的に謝りません。この点は日本人ビジネスパーソンと大きく異なるところです。これは欧米の会社で勤務している方々と同様、一度でも謝れば100%自分の非を認めることになり、それが自分の成績、評価に直結する厳しいビジネス環境であるためです。

④売上・利益最優先の会議

業界・業種を問わず、社内会議や客先との商談をする目的は非常に明確で、売上・利益や自分の成績を最優先に考え、どのようにしてこれらの目標を達成するかを各個人が強く意識しながら会議に臨みます。したがって数字を達成するために、各部署の課題や抱えている問題に具体的かつ論理的に、データを重視しつつ取り組んでいます。筆者が特に強く感じたことは、シンガポールのビジネスパーソンはそのため大変交渉好き、交渉上手ということです。そして、前述したように早口な聞き取りにくい英語で会話をするので、日本人ビジネスパーソンは筆者自身も含め、会話についていくのが精一杯という場面も多くありました。

⑤業務分担と権限の重視

シンガポールのビジネスパーソンは、それぞれの業務分担と役職・職務範囲に常に留意しながら、自身の責任の範疇かどうかを見極めて発言していることがわかります。会社のトップ層から若手社員まで徹底して、上位職の方の意見、指針は遵守します。日本人同士では融通を利かして仕事をする部分もあるため、融通が利かないと感じるかもしれませんが、シンガポールの方々は「これは自分の職務範囲を超えている」「会社との雇用契約に入っていない」などと突然言って、こちらからの要求を拒否することも多くあります。

⑥飲み会などの付き合い

社内や顧客との飲み会や食事会については、社内外を問わず、ランチタイムは誘われれば一緒に昼食にでかけることが多いです。逆に夕方からの食事会や飲み会についてはほとんどの場合、行かないのが普通です。アフターファイブは個人の時間ということと、社内の人間とも顧客とも、ある一定の距離を保つという意味であまり深いお付き合いはしないと、多くのシンガポールのビジネスパーソンが話していました。ただし、新年会や年に数回ある会社全体の食事会などについては、逆に多くのスタッフが参加するとのことです。

いかがでしたでしょうか。外資系企業が進出しやすいとされているシンガポールですが、高度な教育・教養レベルやシンガポール独特の英語、雇用契約や職務権限範囲の遵守、即断即決が前提のやり取りなど、シンガポールの商習慣を理解することは決して楽ではないことを筆者はこれまで体感してきています。少なくとも基本的なビジネス英語力が身に付いていなければまったくついていけない社会であるとも感じます。

前号でもお伝えしましたが、おおむね2020年から約3年間、全世界を襲ったコロナの時期を境に中国経済発展が急減速し、金価格高騰や引き続く円安による日本経済の流れの変化、次期米国大領選の結果によっては日本経済や世界経済の潮目が変化する可能性もあります。

日本国内における各企業の経営活動はますます厳しくなり、当然先細りする収益を海外ビジネス活動で増やしていかなくてはならなくなってまいります。しかし、多くの業種・業界の企業にとっては人材確保が困難になっているのも事実です。海外ビジネスで通用する社員の育成に注力しなくては今後の中長期会社経営にも暗雲が立ち込めてしまいます。会社の経営や方針、方向性もここで根底から見直しを図ることが急務であると、筆者は強く感じています。国内経営方針や海外スタッフ候補の育成、人事管理処遇についても実質的な見直しを図るタイミングでもあるので、ご検討あるいはご希望の企業・団体様がいらっしゃる場合は、引き続き弊社ホームページのお問い合わせ欄よりご希望をお聞かせください。

参照:*1 JETRO海外進出日系企業実態調査
   *2 外務省公式ホームページ シンガポール基礎データ

【プロフィール】

株式会社 サザンクロス
代表取締役社長 小田切 武弘

海外志向が強く、学生時代に海外留学を経験。学業修了後は、大手電気機器メーカーや飲料・食品メーカー、総合商社など数社にわたって、米国、インド、韓国、東南アジアといった諸外国に駐在。その中で、海外でのビジネスに苦戦する日本企業の存在を知り、自らのノウハウを提供したいという思いが芽生える。2017年7月7日、企業の海外展開をサポートする(株)サザンクロスを設立した。

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